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特殊なヒレ

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リボン

各ヒレの軟条第一条が伸長します(尾ヒレを除く)。 一部のヒレが伸長していない個体もありますが、そのようなメスを使っても 伸びた仔を取ることが、系統的には可能です。

■ リボンの遺伝

 常染色体遺伝で、一対のうち片方(ヘテロ)でも表現されます。

 オスのゴノポジウム(生殖器)も伸長する為、生殖能力がありません。 その為、繁殖時にはノーマル(非リボン)のオスとリボンを表現しているメスを使うことで、 リボンのオスを取ります。

 一般的に記号はRib(リボン)とRib+(ノーマル)で表しますが、 ここでは見辛いので R(リボン)と r(ノーマル)で表します。 (一般的に R と r はレッド・ブルーを表します)。

表1-1
※ この色の字がリボン オス(ノーマル:rr)
rr
メス
(リボン:Rr)
RRr rR
rrrrr

 取れる仔のうちの半分がリボンとなります。(もちろん環境や個体差があります。)
「50%がリボンになる」という記述が多いのですが、この「50%」は確率ではなく、 あくまでも「取れる比率」です。確率は、突然変異などが無い限り100%です。

★ リボン化交配手順

リボン化したい系統をA、手持ちのリボン系統Bとの交配手順です。
  1. 系統Aのオスと、系統Bのリボンのメスを交配。
  2. 取れたリボンのメスと、系統Aのオスを交配。
  3. 取れたリボンのメスのうち、系統Aのメスの表現に最も近いものを選定。
  4. 選定したメスと系統Aのオスを交配。
  5. 取れる仔の全てが系統Aと同じ表現のみになるまで、3と4を繰り返す。
系統Aを維持する水槽が無い場合、
  1. 系統Aのオスとメスの表現をしっかり記憶・記録しておく。
  2. 系統Aのオスと、系統Bのリボンのメスを交配。
  3. 取れた仔ののオスと、リボンのメスを交配。(同胎交配)
  4. 取れた仔の中で系統Aに近いオスと、リボンのメスを交配。(同胎交配)
  5. 取れる仔の全てが系統Aと同じ表現のみになるまで、4を繰り返す。

スワロー

通常は、ただヒレがランダムに伸びているのではなく、 各ヒレの軟条がランダムに枝割れし、伸長します。
枝割れせずにランダムにヒレが伸びる系統もあるようです。

■ スワローの遺伝

 常染色体遺伝で、スワローになろうとする遺伝子とスワロー抑制遺伝子によって表現されます。

 オスのゴノポジウム(生殖器)も伸長する為、生殖能力がありません。 その為、繁殖時にはノーマル(非スワロー)のオスとスワローを表現しているメスを使うことで、 スワローのオスを取りますが、必ず取れるというわけではありません。

 スワローになろうとする遺伝子はヘテロで良いのですが、抑制遺伝子は劣勢ホモになる必要があります。 (一つでも抑制があると、表現されないということ)

 通常、Kal(スワロー)、Kal+(非スワロー)、Sup(スワロー抑制)、Sup+(非スワロー抑制) で表しますが、非常に見辛いため、 ここでは K(スワロー)、k(非スワロー)、S(スワロー抑制)、s(非スワロー抑制) として表します。

 例えば、最も多くの比率でスワローが取れる組み合わせは、 オスが「kkss」(ノーマル表現)、メスが「KKss」(スワロー表現)の場合です。

表2-1
※ この色の字がスワロー オス(ノーマル:kkss)
ksksksks
メス
(スワロー:KKss)
KskKsskKss kKsskKss
KskKsskKss kKsskKss
KskKsskKss kKsskKss
KskKsskKss kKsskKss

 この組み合わせの場合、全ての仔がスワローとなりますから、ノーマルのオスが別に用意できないと 交配に使うオスが居なくなり、困ったことになります。

 その逆に、スワローのメスと、スワロー系のノーマルのオスを交配しても、 全くスワロー表現が取れない場合もあります。

表2-2
※ この色の字がスワロー オス(ノーマル:KkSS)
KSKSkSkS
メス
(スワロー:Kkss)
KsKKSsKKSskKSskKSs
KsKKSsKKSskKSskKSs
ksKkSsKkSsKkSsKkSs
ksKkSsKkSsKkSsKkSs
訂正:2007/2/20

 スワローが取れるのも、取れないのも、上のカルノー図に示した例だけではありません。 様々な組み合わせを見たい場合には、GUPPY BASE-BOOK VOL.1(著:筒井良樹/ピーシーズ) をご覧下さい。

★ ここからが大切

 ここまでスワローの遺伝の極一部を紹介しましたが、大切なのは『全ての組み合わせを憶える』こと ではありません。なぜならスワロー系のオスやスワロー表現のメスが、『どのような組み合わせの 遺伝子を持っているか』を見た目で判断することは基本的にできないからです。

 間違いないのは、『常にスワローのメスを使う』ことですが、 表2-2での交配例のようにスワローのメスが用意できない場合もありますが、 ピンク地以外のオスとメスを使って同胎交配を行うことで、 スワローが取れることが多いので、諦めずに交配しましょう。

 表2-2のピンク地以外ですから、
3/4x3/4=9/16=56.25% の確率で以下の組み合わせでの交配が可能になります。

表2-3
※ この色の字がスワロー オス(ノーマル:KkSs)
KSKskSks
メス
(ノーマル:KkSs)
KSKKSSKKsSkKSSkKsS
KsKKSsKKss kKSskKss
kSKkSSKksSkkSSkksS
ksKkSsKkss kkSskkss


(どちらもスワロー系のノーマル)

 それでもスワローが取れなかった場合、一生スワローが産まれない組み合わせを 選んでしまった可能性もありますが、同胎交配を繰り返せば取れる組み合わせもあります。

遺伝の仕組みの要点
  • スワロー系でも、スワローが取れるとは限らない。
  • スワロー系なら、非スワロー同士の交配でも取れる可能性は低くない。
  • スワロー系とはいえ、どのような遺伝子を持っているかは、見た目で判断できない。

 見た目では判断できないのですから、数打てば当たる ということで、同胎交配時は、複数のメスと複数のオスを同じ水槽へ入れて 何回か出産した仔を育てれば、多くの場合でスワローが取れます。

スーパーセルフィン

背ビレが大きくなります。
スーパーセルフィンでなくとも背ビレの伸長する系統がありますが、 スーパーセルフィンの場合は、幅が広がるように感じます。
メスの特徴として、背ビレが平行四辺形に近い形で伸長します。

■ スーパーセルフィンの遺伝

常染色体遺伝(エロンゲイテド:Fa)するものと、 性染色体遺伝(エロンガートゥス:El)するものが知られています。

どちらも優勢遺伝で、一対のうち片方(ヘテロ)でも表現されます。

ここでは、常染色体遺伝(Fa)について、F(スーパーセルフィン)とf(非スーパーセルフィン)として 説明します。

表3-1
※ この色の字がFa オス(ノーマル:ff)
ff
メス
(Fa:Ff)
FFf Ff
fffff

上は、オスがノーマルでメスがヘテロの親を使った場合です。 例えば、両親がヘテロの場合は下のようになります。

表3-2
※ この色の字がFa オス(Fa:Ff)
Ff
メス
(Fa:Ff)
F FFFf
fFfff

この場合、Faがホモ(FF)になる固体が取れ、これを俗に『Faダブル』と呼びます。 Faダブル同士の交配では、当然全てがスーパーセルフィンであり、Faダブルとなります。

ただしFaダブルの場合、若いうちに交配する分には特に問題ありませんが、 Faが確認できるほど成長すると、交配能力が落ち、出産まで時間がかかるようです。

★ スーパーセルフィン化交配手順

基本的にリボン化と同様です。

■ その他のセルフィン

先述の『スーパーセルフィンでなくとも背ビレの伸長する系統』ですが、 こちらの温室では一般的に背ビレの短い系統(アクアマリンやコブラ系など)でも、 緩いラインブリードを重ねる事で、背ビレが代を重ねるごとに伸びることがあるのを 確認しております。

それら伸びたオスと、同じ品種の伸びていない系統のメスを交配すると、 代を重ねる毎に縮みますが、どのように遺伝しているのかは不明です。

メラー

各ヒレの鰭膜がランダムに(恐らく)アポトーシスによって成長しないことにより、 箒のように見えます。
鰭膜が無いと泳げないのではないかと心配になりますが、 問題なく泳ぎ、繁殖能力もあります。

■ メラーの遺伝

 常染色体の劣勢遺伝+α(おそらくノーマルのメスは抑制遺伝子を持っています)
現在調査は行っておりませんが、親の一方にメラーを使って交配し、その後同胎交配を 繰り返すと、F2〜F3で充分なメラー表現が得られます。


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